続moss

「コケ」という言葉は一般にはいろいろな植物群のものを含めて、小さくて、あまり目立たないものを総称している。(井上浩『フィールド図鑑 コケ』東海大学出版会、1986)


坂本一成研究室「Tokyo Tech Front」を見学した。これまで訪れたことがある他の作品に比べ、「関係としての建築」という概念が直接的に感じられた。その印象はおそらく建物の規模と、不特定多数が行き交うというプログラムによるところが大きいのだと思う。自分の意識の外に他者がそれぞれ存在しているという感触。これは設計者の建築観というより世界観の現れだろう。「関係としての建築」とは、人と人との関係にほかならないのだという当たり前のことに気がついた。今日は大勢の見学者が建築内を自由に見て回っていたけれど、実際に使用されるときには、それぞれの人が自分の領域、属性を持っているわけで、その多様性の混在によってこの場はより豊かになるはずだと思う。写真はたくさん撮ったものの、対象化されないことを目指している建築を、カメラを通して「見る」(=対象化する)のは難しい。僕の手には余る。